
「退職願」と「退職届」の違いは、
「目的と法的効力」の違いで区別します。


退職する際に提出する書類には、「退職願」と「退職届」の2種類があります。
一見似ているこの2つですが、実はその意味やタイミング、撤回の可否などに明確な違いがあります。
本記事では、それぞれの違いを明確にし、正しい使い分け方についてわかりやすく解説します。
「退職願」と「退職届」の違い
まずは「退職願」と「退職届」の基本的な意味と役割について確認しましょう。
下記の表に違いを纏めました。
項目 | 目的 | タイミング | 撤回の可否 | 法的効力 |
退職願 | 自らの退職の意思を会社に願い出る | 退職を決意した段階で提出 | 会社の承認前であれば可能 | 合意前の意思表示 |
退職届 | 退職の意思を正式に通告し手続きを進める | 退職日が決まった後に提出 | 原則として不可 | 法的効力あり |
「退職願」と「退職届」の定義の違い
「退職願」は、あくまで「退職したい」という本人の希望を会社に伝える書類です。
そのため、提出した後でも、会社がまだ承認していない段階であれば、撤回することが可能です。
一方で「退職届」は、退職の意思を最終決定として会社に伝える正式な通告です。
法的効力を持つため、提出後に撤回することは基本的にできません。
つまり「退職届」を出すことで、退職が確定するのです。
「退職願」と「退職届」の提出タイミングと使い分け
「退職願」は、退職の意思を固めた段階で、まず会社に相談する意味で出します。
円満退職を望む場合や、退職日がまだ確定していない段階での提出に適しています。
一方「退職届」は、退職日が確定し、最終的な退職の意思が固まった段階で提出します。
労働契約や就業規則では、退職日の2週間以上前に提出するのが一般的です。
「退職願」と「退職届」の法的性質と撤回の可否
「退職願」は、会社に承認されるまでの間であれば、撤回できる余地があります。
つまり、まだ“願い”である段階なので、話し合いによって状況が変わることもありえます。
これに対して、「退職届」は法的にも効力のある文書であり、原則として撤回はできません。
「提出=最終決定」となるため、提出前にしっかりと意思確認をしておくことが大切です。
「退職願」と「退職届」の書式と書き方のポイント
下記に、それぞれの書類の書き方とポイントを記しました。
項目 | 宛先 | 文面(表現) | 共通の記載情報 |
---|---|---|---|
退職願 | 直属上司、人事部 | 「退職させていただきたく、お願い申し上げます」 | ・提出日 ・自身の氏名、配属部署 ・退職希望日 ・退職理由(簡潔に) |
退職届 | 会社、代表者 | 「ここに退職を届け出ます」 より明確で、形式的な表現 |
「辞表」との違い
「辞表」という言葉もありますが、これは主に役員や管理職が辞任する際に使用する書類です。
「退職願」や「退職届」とは使用される立場が異なるため、混同しないように注意が必要です。
用語 | 対象 | 内容 |
退職願 | 一般従業員 | 退職をお願いする文書 |
退職届 | 一般従業員 | 退職を通告する文書 |
辞表 | 管理職・役員 | 職務の辞任を申し出る文書 |
「退職願」と「退職届」の正しい使い分け方
退職の意志が固まった初期段階では「退職願」を提出し、
会社との話し合いを通じて退職日などが正式に決まった後に「退職届」を提出する、
という流れが一般的であり、また望ましいとされています。
会社との信頼関係や退職の円満さを保つためにも、段階的な提出が重要です。
まとめー「退職願」と「退職届」の違い/「目的と法的効力」の違いで区別
「退職願」と「退職届」は、どちらも退職の意思を伝える文書ですが、
その目的や法的効力に違いがあります。
「退職願」は希望を伝える文書であり、まだ撤回の余地がありますが、
「退職届」は最終的な通告文であり、撤回はできません。
正しいタイミングで正確に使い分けることで、退職手続きをスムーズかつ円満に進めることができます。